CHAPTER3|LIGA ESPANOLA デポルティーボ
(4−2−3−1) ○11 ○8 ○10 ○9 ○6 ○7 ○2 ○3 ○4 ○5 ○1
メンバー表(03-04)
番号 | 選手名 |
---|---|
1 | モリーナ |
2 | ロメロ |
3 | ナイベト |
4 | アンドラーデ |
5 | M.パブロ |
6 | M.シルバ |
7 | セルヒオ |
8 | ルケ |
9 | バレロン |
10 | ビクトル |
11 | パンディアーニ |
監督 | イルレタ |
◇奇跡のチーム”スーペル・デポル”
この原稿を執筆するために、あらためて03-04シーズンのCL準々決勝、デポルティーボvsACミランの試合を見たのだが、そのレベルの高さに驚いた
・当時のミランはチームとしてのピークを迎えており、主力の高齢化に悩まされている現在よりも強かった
・だが、デポルティーボもまったく負けていなかった
前線からの組織的なプレッシング、巧妙なラインコントロール、練り込まれたサイド攻撃
→これらを武器にタレント力で上回る相手と高度な頭脳戦を展開していた
◇4−2−3−1の理想形
”スーペル・デポル”の誕生は、98-99シーズンにハビエル・イルレタが監督に就任するところまで遡る
・99-00シーズンには早々とリーガを制し、在任6シーズンでCLベスト4が1回、ベスト8が2回と欧州の舞 台でも輝かしい成績を残している
→彼は「イルレタ・ノート」と呼ばれた分析ノート持ち、独自の戦術理論を駆使して、ラコルーニャの田舎 クラブをヨーロッパを代表する強豪へと育て上げた
デポルティーボは、今や現代サッカーの定番となった4-2-3-1の教科書だ
・このシステムのメリットは、大きく分けてふたつある
→サイドにふたりの選手を常駐させられること
中盤を2ラインで構成しているためボールポゼッションが容易になること
・1ラインはコンパクト志向でカウンター向きで、2ラインはパスコースが増えるのでポゼッション向きと見な されている
それまでスペインでは中盤ダイヤモンド型の4-4-2と、ダブルボランチ+両ワイドの4-4-2が主流だった
・前者が攻撃重視で、後者がバランス重視
→いずれもスペインらしくサイドアタッカーを生かす布陣だ
・4-2-3-1は、バランス重視の後者の4-4-2からFWの1枚をトップ下に下げた形である
このシステムに限らず、1トップはゴール前の人数が足りないので、2列目からの飛び出しが必要不可欠だ
・4-2-3-1ならば、逆サイドのMFの飛び込みがポイントになる
・イルレタは、この動きは徹底して叩き込んだ
→右サイドのサンチェス、左サイドのルケが必ずファーサイドに顔を出す
・SB、DMF、SMFのトライアングルのパス回しは機械的で、逆サイドからの飛び込みを含めて極限までチーム プレーが練り込まれていた
→当時のデポルティーボのサイドアタックからフィニッシュに至るメカニズムは、4-2-3-1の理想形
機械化されていたのは、パス回しだけではない
・むしろイルレタの真骨頂は守備にこそあった
・前線から激しく相手を追い立てて、DFラインを高い位置にキープ
また、プレッシングの有無で細かくDFライ ンを上下動させた
・2ラインの中盤はポゼッション志向と前述したが、デポルティーボが画期的だったのは2ラインの中盤本来の 特徴であるポゼッションの優位性と、本来対立するコンパクト志向を高いレベルで融合させた点にある
→1対1のプレスではなく、2ラインの中盤の位置関係を利用して前後左右から囲い込む事によって、ボール ホルダーの選択肢が著しく限定されるので、思い切ってDFラインを上げられる寸法だ
◇高過ぎるチームの完成度が仇に
攻守において隅々までオートマティズムが浸透し、機能美すら感じさせる組織力を持つに至ったデポルティーボ
・だが皮肉にも、それがデポルティーボの、そしてイルレタの限界だった
→プレーのパターン化は効率的な反面、相手に読まれると脆い
・デポルティーボの場合、ネックになったのは守備面
→機械的にDFラインを上げるので、その裏を突かれるようになった
03-04シーズンのCLのモナコ戦の3-8は、その象徴的な出来事である
・攻撃面でもサイドでのパターン化されたコンビネーションに依存するあまり、サイドチェンジを使った広い展 開が少ないという弊害も見受けられた
→逆に、守備面でも局面に人数をかけるため、サイドチェンジされると弱い
メンバーが固定化されチームの完成度が極限まで高まったゆえに、生じるジレンマ
→イルレタはその後、ベティス、サラゴサの監督に就任しているが、いずれも辞任している
”スーペル・デポル”を「作ってしまった」ことで目指すサッカーのハードルが高くなり過ぎて、チーム作りに時間がかかるようになったのかもしれない
→確かに数年スパンで構築したあのチームに、短時間で近づくのは容易ではない