CHAPTER4|OTHER LEAGUSE ASモナコ

(4−4−2)

○10  ○11

○8        ○9

○6  ○7

○2   ○3  ○4   ○5

○1

メンバー表(03-04)

番号 選手名
1 ローマ
2 エヴラ
3 ロドリゲス
4 スキラチ
5 ジベ
6 ジコス
7 ベルナルディ
8 ロテン
9 ジュリ
10 ブルソ
11 モリエンテス
監督 デジャン

ディディエ・デシャン
2003年、モナコは経営破綻していた
・2部に降格するはずだったが、モナコ王子が乗り出して辛うじて1部に止まっている
  →モナコは王子のお抱えクラブといっていい

財政破綻で危うく降格しそうになったシーズン、モナコはクラブ史上初の快挙を成し遂げた
・CLのファイナルまで進出したのだ
レアル・マドリードを破り、チェルシーを下してファイナルへ進んだ
 決勝ではエースのジュリーが早々に負傷退場した不運もあり、モウリーニョ監督率いるFCポルトに敗れた
  →この時のモナコはカウンターのチームだった

フォーメーションは4-4-2か4-5-1で、手堅い守備から縦に早い攻めを得意としている
・エースは快足のジュリーで、CFかRMFに起用された
モナコの特徴のひとつは複数のポジションをこなせる選手が多かったことだ
 レアル・マドリードからのローンだったモリエンテスを除くと、ほぼ全員が複数のポジションをこなしている
  →選手数が少ない事情もあったとはいえ、デシャン監督流でもあった












デシャンの哲学は、彼が育った”ナント・スクール”とユベントス時代の監督だったリッピのミックスである
 ドゥサイー、マケレレなどを生んだナントは、育成機関に定評がある
  ・正確なショートパスと運動量をベースにした、いわゆる”人とボールが動くサッカー”の権威であった
  ・守っては相手ボールにプレッシャーをかけ続け、DFラインを高く保つ
   ボールを奪ったら前へ相手ゴールへのベクトルを維持したままカウンターを繰り出す
 一方、リッピの影響を受けているのは用兵術だ
  ・ユベントスは”寝技”の名手だった
   大量得点による勝利という幻想も持たず、常に接戦を制する用意の出来ている戦法なのだ
  ・試合は0-0で始まり、そのままイーブンか、どちらかが点をとって1点差で推移する時間帯が長い
   その接戦時の用意が出来ているのがユベントスであり、デシャンが色濃く受け継いでいる特質だった
  ・1点リードしていれば、選手交代をして守備的な戦術へシフトする
   逆に負けていれば攻撃型へ変える
    →ここまでは、どんな監督でも用意する
  ・しかし、例えば守備型へシフトしたが同点に追いつかれ、再び攻撃型へ戻したいケースもある
   攻撃型にして逆転に成功し、残りの時間を逃げ切りたい場面も出てくる
    →その時の用意まで出来ていれば、接戦に強いチームになる

デシャンが選手のマルチ・ロールを重視するのはこのためだ
・例えば、モリエンテスとジェリーの2トップでスタートしたが1点をリードされた
 攻撃を強化するために、アデバヨールをFWに起用し、ジェリーをRMFへ下げる
  →攻撃力を増して逆転に成功したとする
・問題はこの後だ
 モリエンテスを下げて守備型のMFを投入すれば4-5-1となって守備を強化できる
 そのまま逃げ切るなら、さらにジェリーに変えてMFを起用して試合を終わらせる
 もし、再び攻撃したいならジェリーをFWに上げて攻撃型のMFを投入する
  →この流れが可能なのは、ジェリーがFWとMFの両方をこなせることが前提だ
   デシャンは、ポリバレントな選手を複数用意して、試合中に攻守両面で対応力のあるチームを作っていた

もうひとつ、デシャンらしいのはダイレクトプレーの使い方だ
モナコの心臓部であるボランチにはベルナルディジコスを重用した
 →ともに運動量が豊富でボール奪取能力に秀でている
・このふたりのところでボールを奪うケースが多いのだが、その時に間髪入れずに相手ディフェンスラインの裏 へ蹴って、縦1本でジュリーが抜け出す得点パターンを得意としていた
  →CLのグループリーグでラコルーニャに8ゴールを叩き込んだ試合では、このダイレクトプレーが効いた






攻撃のアプローチとしては、これ以上ないほど単純
 だが、そこに目をつけたのは守備的なMFとして一時代を築いたデシャンらしい
  ・現在、多くチームがフラットラインを採用している
  ・ボールにプレッシャがかかっていればディフェンスラインを押し上げ、かかっていなければ下げて裏への   パスを消す
 どのチームもやっているラインコントロールだが、これには泣き所がある
  ・中盤で攻守が入れ替わった瞬間、ディフェンスラインはほとんど反応できない
  ・特にこぼれ球に関しては、上げるか下げるかの判断に難しい
   ラインはフリーズされてしまう
    →モナコはその瞬間を狙っていた
  ・ベルナルディは、奪ったボールやこぼれ球をワンタッチで裏へ落とすパスが得意で、スタートダッシュが   並はずれて早いジェリーが敏感に反応している
  ・デシャンは若い監督だったが、選手時代から”監督”をやってるようなリーダータイプで、選手としての   経験を監督としても活用していた
   また、現役時代が近かったので、現代サッカーの特徴を的確に把握していた
    →現役を退いて10年も経てばサッカーは変わっている
     ダイレクトプレーの活用は、つい最近までピッチにいた若い監督の強みが表れていたように思う