CHAPTER4|OTHER LEAGUSE セルティック

(4−4−2)

○10  ○11

○8          ○9
  
○6  ○7

○2   ○3  ○4   ○5

○1

メンバー表(07-08)

番号 選手名
1 ボルツ
2 ネイラー
3 マクマナス
4 コールドウェル
5 ヒンケル
6 ドナーティ
7 S.ブラウン
8 マクギーディ
9 中村俊輔
10 フェネゴール
11 マクドナルド
監督 ストラカン

スコットランドは、お隣のイングランドと非常に近いサッカースタイルを持つ
・激しい身体のぶつかり合いを好み、すべての選手に戦うことを求める
・例えば、イタリアではFWやトップ下などの攻撃的なポジションの守備を免除し、その分ほかの選手がカバー するという分業制の文化があるが、英国サッカーは逆
  →すべての選手が等しく攻守のタスクを受け持ち、特定の王様は作らない
・英国圏で中盤フラット型の4-4-2が圧倒的に普及してるのは、このシステムがこうした英国人の精神性を反映 したものだからだ

◇王様を置いた英国サッカー
中村は数秒ほどフリーになる時間を与えられれば、決定的な仕事が出来る特別な才能を持っている
・一方で、ヨーロッパのトップレベルで戦うためには、スピードとパワーが決定的に足りない
・ヨーロッパ移籍後、相手とボールの間に身体を入れるテクニックや、寄せられる前に味方にボールをはたく球 離れの早さを覚えてよく適応しているが、彼個人の努力だけでは自ずと限界はある
  →中村の良さを最大限に引き出すためには、彼にいかにフリーになるための時間を与えるのかというチーム   としての明確な方針、加えてチームメイトの協力が必要不可欠

特別扱いは決して認めない英国サッカーと、特別扱いしないと光らない中村
・はっきりいって、相性は悪い
 しかし、この賭けは成功だった
  →ストラカン監督は、中村を特別扱いしてくれたのである

セルティックは典型的な英国流4-4-2を採用しているが、RMFにプレーメーカータイプの中村を置いている
・これは大変珍しいケースだ
・そもそもこのシステムのサイドはダイナミックな上下動が求められるポジションで、そこにプレーメーカーを 配置するのはリスクが高い
  →サイドで走り負けてしまうと、チーム全体が押しこまれる原因になってしまう


中村の右サイド起用が成功したのは、ふたつの理由がある
(1)対戦相手のレベルの低さ
スコティッシュ・プレンミアリーグ
 →セルティックとレンジャーズの2強とそれ以外では大きなレベルの差がある
よって、国内リーグではボールを支配できる試合を大半なので、それほど守備の事を考えなくてもいい
 →純粋に中村の攻撃面の才能を生かすことに専念できる環境といえる

(2)ストラカン監督の存在
05-06シーズンセルティックの監督に就任したストラカン
・ロングボール中心のサッカーからパスサッカーへの転換を図っていた
 その切り札として迎えられたのが、中村だった
  →指揮官は王様を作らない英国サッカーをベースにしながら、そこに無理やり中村の居場所を作ってくれた

王様を置いた英国サッカー
・正直、噛み合わせは悪い
・3年経った今でも、中村はセルティックのサッカーにジャストフィットしている訳ではないし、時間帯によっ ては全くボールに絡めなくなる
 だが、セルティックのチャンスの大半は、中村を経由して生まれている
  →完全にフィットしてはいないが、もはや彼なしでセルティックの攻撃は成り立たない事も事実なのだ

問題は、対戦相手のレベルが上がった場合だ
・CLやレンジャーズとのダービーといった互角、あるいはそれ以上の相手との戦いではボール支配率が下がり、 中村が守備に奔走することになる
・はっきりいって、強敵との対戦で彼はまったく機能していない
・単純なゲームの主導権争いだけを考えると、別の選手を起用した方が良いだろう
  →だが、中村を外すと点がとれなくなる

ジレンマである
・強豪相手には中村の個人技(フリーキックも含む)に期待せざるを得ないのに、相手が強くなると中村が守備 に追われて消えてしまう
・平等な英国流4-4-2の中に王様の居場所を作るというのは実験的な融合で興味深い反面、道理を曲げて無理を 通すための「なにか」が必要だ

ボールポゼッションで相手を圧倒できないのであれば、中村を攻撃に専念させるための戦術的な工夫が鍵になる
・中村をトップ下に置いた4-3-1-2あたりが、現実的な落としどころだろうか
・優秀なウイングガーであるマクギーディを生かすために、4-3-3の両ウイングに中村とマクギーディを配する システムも興味深い
・オーソドックスな方法は守備専用の右サイドバックを起用する事だが、縦の突破力がない中村はサイドバック のオーバーラップがないと攻撃力が半減するので却下
  →中村を外すのも選択肢のひとつだが、それでは攻撃があまりにも運頼りになってしまう
ヨーロッパで中堅レベルのセルティックがトップクラスのセルティックと勝負するには、異能者を外して小さくまとまるのではなく、自分たちの殻を破るブレイクスルーが必要
セルティックは中村をエースとしたことで、従来の英国サッカーを”半歩”はみ出した
・方向性は間違っていない
 →あとは、現状の課題をいかに克服していくかだ

そのためには前述したように、4-4-2へのこだわりを捨てる必要があるだろう
・確かに4-4-2は英国圏のサッカースタイルと密接に結びついているが、例えばイングランドでは外国人監督の 流入などで徐々にそれが崩れてきている
  →英国人本来の良さとは、すべての選手が攻守に頑張るハードワーカーにあり、それはどんなシステムでも   生かすことが出来る

実際にストラカン監督もCLでは4-5-1を採用することが多いが、現状では主に守備のための変更に過ぎない
・そうではなく中村の攻撃力を引き出すための「プランB」を熱成させる必要がある
セルティックの未来が頭打ちで終わるのか、それともさらに大きく拓けていくのかは、この点に懸かっている