CHAPTER1|PREMIER LEAGUE ボルトン

(4−4−3)

           ○11
○9             ○10

   ○7     ○8   
             ○6

○2   ○3  ○4   ○5

       ○1

メンバー表(06-07)

番号 選手名
1 ヤースケライエン
2 ベン・ハイム
3 ファイ
4 メイテ
5 ハント
6 I.カンボ
7 スピード
8 ノーラン
9 ディウフ
10 デイピス
11 アネルカ
監督 アラダイス

”ビッグサム”への誤解

  • アラダイス監督率いるボルトンは、不思議なチームだった
    • ロングボール主体で激しいフィジカルコンタクトを好む古典的な戦術
    • アネルカなど不振をかこっていた選手を次々と再生させていき、2部リーグに低迷していた古豪は、わずか数年でプレミアリーグの中位に食い込むまでに急成長した

イングランド人のトラウマ

  • ボルトンへの賛否両論、それは「キック&ラッシュ」という前時代の遺物に対する、イングランド人の複雑な感情の表れ
  • 激しいハイボールの競り合いに沸き、諦めないでタッチラインまでボールを追うがんばりに惜しみない拍手が送られる、それがイングランドのスタジアムの日常だ
  • だが、時代は流れ、それでは国外のビッグクラブには勝てなくなった
  • ボルトンはそんな時代に突如現れた異端児だった
    • ロングボールばかりの時代遅れのチーム、やたらと身体をぶつけてくる汚いチーム
      • イングランド人のボルトンへの低評価は、近親憎悪に近い
      • 捨て去った過去の姿だからこそ、余計に見たくないのだ

”選手再生工場”の本質

  • ボルトンは単なる時代遅れのチームではない
    • アラダイスは懐古主義から「キック&ラッシュ」を復活させたわけではなく、むしろ先入観にとらわれない型破りな発想からボルトンを叩き上げていった
  • 型破りの発想は、採用するフォ−メションに表れている
    • アラダイスはかなり早い段階で、イングランド伝統の4-4-2から脱却している
    • なぜ、アラダイスは、新たなシステムを導入したのか?
      • おそらく単純に、今いる選手の特徴を生かすために最も適したシステムを追求した結果だろう
プレミアリーグの4-4-2
フィールドプレイヤー全員に等しく攻撃と守備が求められるという、オーソドックスで公平なシステム
  • すべてのチームが同じシステムを採用してしまうと、そこからはじき出される選手が必ず出てくる     
    • 例えば、攻撃は素晴らしいが守備はダメ、逆に守備は文句なしだが攻撃はダメ、という片方の能力に特化したタイプの選手
  • ビッグサムのチームは、彼の思惑通り”選手再生工場”になった
    • 3人で構成される逆三角形の底に守備専門のアンカーを置いたことで、他ポジションの守備の負担が軽減
    • 両ウイングにはディウフら、CFタイプを配置した
      • ロングボールが多くなったのは、前線の高さを生かした結果に過ぎない
  • 彼の考え方の道筋は保守派のそれではなく、むしろ合理的で既成概念を疑う改革派そのものだ
    • 雑誌の名前になるほど定着した4-4-2を疑い、使えない選手というレッテルを疑い、ロングボールが古典的という価値観を疑う
    • その先にできたスタイルが原点回路の「キック&ラッシュ」になったのは皮肉だが、04-05シーズンに6位でUEFAカップ出場権を獲得し、ボルトンとの10年契約を勝ち取った手腕は本物である