CHAPTER2|SERIEA

セリエAの傾向*

  • イタリアといえば、”カテナッチョ”と呼ばれる守備的なサッカーのイメージが強い
    • 現在の傾向は守備的というより戦術的といったほうが正確だろう
    • だが、その根底に流れる意識は共通している「最小の労力で最大の効果を得る」
  • 自陣を固めてカウンターで勝負するサッカーは、「最小の労力で最大の効果を得る」を体現したもの
    • 攻守のバランスを保つことを第一目的にする現在の高度に戦術化されたサッカーも、天井に貼ってあるラベルが「攻撃の人数」から「運動量のコントロール」になっただけで、根っこにある精神性は変わっていない
  • セリエAは戦術重視
    • 具体的に言えば、攻守のバランスを恒常的に保つサッカーを志向し、選手にはきめ細かい約束事が課せられる
      • それを守らなければ、たとえスター選手であろうとも容赦なく干される
  • 02-03シーズンのパルマ時代の中田英寿の境遇は、その典型だろう
    • 4-4-2の右サイドで起用された中田はプランデッリ監督から自由なポジション移動を禁じられていた
    • 通常ならば彼が自分のポジションを移動しても、他の選手がそこをカバーすれば問題ない
      • だが、当時のパルマは、2トップのアドリアーノとムトゥが守備のタスクを免除されていたため、彼ら以外の選手が自身のポジションを離れてしまうと、カバーする選手が誰もいなくなってしまうのである
    • アドリアーノとムトゥをチーム内のカバーリングのサイクルに組むと、得点力は確実に低下する
      • そのぶん、チーム全体が動くようになれば90分間を通したパフォーマンスは向上するかもしれないが、それで得点力を補えるのかどうかは神のみぞ知るである
  • そもそもイタリア以外のリーグならば、この程度の戦術的な隙は許容範囲である
    • そんなことばかり気にしていたら攻撃にならないからだ
    • だが、セリエAではこうした戦術的な不備は決して見逃さず、徹底的に狙われる
  • 相手の隙を探し合う神経戦、必然的に均衡した試合が多くなる
    • そのため、それを打ち破る「傑作した個」が他リーグ以上に求められるし、それを許容する土壌もある
      • イタリアでよく言われる「攻撃3人、守備7人」の原則
      • 守備のタスクを免除された人間が3人、彼らの分まで戦術的な制約を負った選手が7人いるという事だが、このやり方は危険と背中合わせだ
    • アタッカーの資質に頼った行き過ぎた効率化は、中盤を飛び越すロングボールを誘発し、ビッグクラブ同士の対戦ではその弱点が決定打となった
      • 強力なアタッカーがいれば数少ない決定機で効率よく得点できるが、チャンスの数そのものが少なくなってしまえば相対的に得点数は下がる
  • イタリアは監督の育成システムが整っており、セリエAは優秀な監督を振るいにかける場として機能してる
    • 彼らは戦術という体系化された理論を重視しているだけに、サッカーをラディカルに捉えているため、斬新な理論から生み出された興味深いチームが登場する(ローマの「ゼロトップ」など)