CHAPTER2|SERIEA ユベントス
(4−4−2) ○10 ○11 ○6 ○7 ○8 ○9 ○2 ○3 ○4 ○5 ○1
メンバー表(07-08)
番号 | 選手名 | |
---|---|---|
1 | ブッフォン | |
2 | モリナーロ | |
3 | キエッリーニ | |
4 | レグロッターリエ | |
5 | グリゲラ | |
6 | ネドベド | |
7 | ザネッティ | |
8 | ノチェリーノ | |
9 | カモラネージ | |
10 | デル・ピエーロ | |
11 | トレゼゲ | |
監督 | ラニエリ |
◇オーソドックスなユベントス
セリエAで最も優勝回数が多いユベントス
・だが、UEFAチャンピオンズカップの時代も含めて、CLの頂点に立ったのは2回だけ
・最初に優勝した1985年の決勝は”ヘイゼルの悲劇”として知られているリバプール戦
→プラティニのPKによる1−0だった
・2度目の1996年は、全盛期のアヤックスと対戦してPK戦で勝っている
→どちらも快勝ではない
歴代の監督
→トラパットーニ、カペッロ、リッピなど、実績は抜群だが手堅い采配の勝利主義者が率いてきた
長期のリーグ戦では、弱い相手にとりこぼさず、強い相手には引き分けを狙うのが優勝の常道ともいわれている
→ユベントスには安定感があり、僅差勝負にも強いという印象
ユベントスの戦術は、その時々のオーソドックスである
<80年代>
・82年W杯で優勝した主力メンバーである、ジェンティーレ、カブリーニ、シレアという鉄壁の守備陣
・ボニエクとバロンドールを3年連続で受賞したプラティニのタンデムが攻撃に推進力をを加えた
最前線にはW杯得点王のロッシを擁した布陣だった
→訓練されたタフなチームで、プラティニの華麗なプレーが華やかさを加えていたものの、戦術的な真新し さはなかった
<90年代>
・スキラッチ、バッジョ、ビアリ、ラバネッリ、ピエーロといった強力なFWを補強しているが、基本的には 堅守速攻がトレードマーク
・90年代後半に在籍していたジダン
プラティニの後継者ともいえる逸材だったが、地元での評価はプラティニよりも低い
→ジダンはあまり得点しなかったからだ
セリエAに1シーズンで復帰した07-08シーズン、ユベントスは3位でフィニッシュ
・予算縮小で大きな補強もないまま、デル・ピエーロやネドベドといったBを戦ったベテランを軸に手堅く勝ち 点を重ね、CL出場権を手にしたのはプラン通り
・セリエBで優勝を果たした気鋭の若手監督デジャンを更迭し、老練の苦労人であるラニエリ監督に指揮を執ら せたのも、結果的には正解だったといえそうだ
→07-08シーズンのユベントスは、急速な改革よりも3位を確保する現実路線を採用していた
フォーメーションは4-4-2
・MFの左にネドネド、右にカモラネージ
→ともにハードワーカーながら、クリエイティブなプレーもできる信頼の置ける仕事人である
・2トップはデル・ピエーロとトレゼゲ
→D.ピエーロは左から中央にかけて動きながらチャンスメーカーとなり、正確無比なシュート技術を持つ
トレゼゲは、ペナルティエリア内でのワンタッチシュートが真骨頂のハンマーストライカータイプ
普通にやって普通に勝つ、それがユベントスらしいスタイルである
・国内リーグのほとんどの試合で戦力的に優位なのだから、冒険的な戦術を採るリスクを冒さず、新戦力の選手 でも対応しやすいオーソドックスなやり方で戦い、シーズンを通して安定した力を発揮すれば、十分に優勝圏 内には入れるのだ
・守備的・攻撃的といった色合いの違いはあっても、実は各国で最多優勝を数えるような名門クラブの大半が、 オーソドックスな戦術である
→ドイツのバイエルン・ミュンヘン
イングランドのマンチェスター・ユナイデットU、
ポルトガルのFCポルトやベンフィカ
スペインのレアル・マドリード
こうしたオーソドックス・スタイルの強豪チーム
・重要なのは、戦術そのものよりもコンディションの維持やチームの結束である
・勝者のメンタルティーとシーズンを通しての安定感だ
→ユベントスはこの点できめ細かいチームで、リッピ監督の時代はそうだった
01-02、02-03シーズンとセリエA連覇を果たしたリッピ監督のユベントスもオーソドックスだった
・フィジカル能力の高い選手を揃え、この時期から基本線となったプレッシングの掛け合いで負けない重量感を 持っていた
・リッピは大差勝利の幻想を持たず、僅差勝負を制するノウハウを考え抜いてた
・例えば、複数のポジションをこなせる選手を複数用意し、状況変化に強いマルチ対応のチームに仕上げている
→試合は必ず0-0で始まる
その後、1点をリードするか、1点をリードされるか
大半の時間帯は1点を巡る攻防だ
<たとえば、実際にこんなゲームがあった>
(1)ユベントスが1点をリードする
・70分を超えた時間帯で、カモラネージをアウトして、カモラネージのいたRMFに左のネドベドをスイッチ、 ネドベドのポジションにはLSBのザンブロッタを上げ、空いたLSBに守備の強いビリンデッリを入れた
・選手交代はカモラネージからビリンデッリだけだが、全体的には守備的にシフトしている
・複数のポジションができるネドベド、ザンブロッタがいるからこその戦術的シフトチェンジだ
マルチ対応はここからだ
(2)守備を強化したつもりが、同点にされてしまった
・ここで、再度攻撃型へシフトし直す
・今度はRSBをアウトしてビリンデッリを右へ回し、いったん中盤に上げたザンブロッタを再びLSBに戻す
そして、攻撃的MFを投入する
・これで再びゴールを奪って勝ち越すと、残り5分は徹底した守備固めだ
2トップのひとりをアウトしてストッパータイプのDFを入れ、フォーメーションを3-6-1にして相手のハイ クロスを跳ね返して逃げ切った
今ではCLの強豪のほとんどが、こうしたマルチ対応を用意している
→90年代で最も効率的に行なって先鞭をつけたのがアヤックスとオランダだった
負けているからといって、次々にFWを投入して同点にしたまではいいが、残り時間を守る力がなくなって勝ち越されてしまう、守備固めに奔走したが同点にされて攻め手がない
→ユベントスはそうした状況に陥らない準備のできているチームだった
<また別の試合での話>
ホームにシエナを迎えた日、デッレ・アルビは大雪に見舞われた
・試合前、シエナの選手はピッチに出てこない
シエナから来た記者に聞くと「寒いからじゃないか」とのこと
・ユベントスは全員がピッチに出て、降りしきる雪の中で黙々といつも通りウォーミングアップをしていた
・オレンジ色のボールでキックオフされたゲームで、ユベントスは格下相手でも決してリスクを冒さず、手を抜 かず、ロングボールを主体とした天候に合わせたプレーで押し切り、しっかりと勝ち点3を手に入れた
→プレーの内容は大して見るべきものはなかったが、このクラブの強さを見せつけられた気がした