CHAPTER3|LIGA ESPANOLA バルセロナ

(4−3−3)

○11
○9         ○10

○7       ○8
○6

○2   ○3  ○4   ○5

○1

メンバー表(07-08)

番号 選手名
1 V.バルデス
2 アビダル
3 G.ミリート
4 プジョル
5 ザンブロッタ
6 Y.トゥーレ
7 デコ
8 シャビ
9 ロナウジーニョ
10 メッシ
11 エトー
監督 ライカールト

◇オランダ流の踏襲
バルセロナ
・1928年に始まったリーガ・エスパニョーラの初代チャンピオンで、偉大な選手と共に栄光を築いてきた
・だが、独特のサッカー文化を加速させたのはクライフ監督が率いた”ドリームチーム”だった
→90-91シーズンから4連覇を達成している
・戦術的にはタッチラインいっぱいに開いたウイングプレイヤーを活用したパスワークに特徴があり、
 それはクライフがアヤックスの監督時代に導入した手法である

ファンハール監督で2連覇した時には、彼がアヤックスの監督だった時の選手を連れてきたので、バルセロナのオランダ化は加速した
・04-05シーズンから2連覇した時の監督もオランダ人のライカールト
・2006年にはCLも制したこの時代は、オランダ人が多かったわけではないが、プレースタイルはクライフ式

◇ウイングの活用
バルセロナの特徴は、ウイングプレーヤーの活用
ロナウジーニョ、メッシ、ボ−ジャン、イニエスタといったタイプが起用されている
・右にメッシ、左にロナウジーニョという配置が典型的だが、利き足とサイドが反対というのもバルセロナ

前線のサイドにテクニックのあるアタッカーを配置することで、ピッチの幅を広く使った攻撃を行う
 同時に、最も技術のある選手を最も余裕を持ってプレーできる場所に起用する
タッチラインを背にDFと対面できるサイドは、1対1で仕掛ける余裕がある
・現代のゲームでは、ピッチ中央は非常にプレッシャーが強い
 ロナウジーニョやメッシを中央で消耗させるよりも、サイドで存分に力を発揮させようという狙いである

左利きのメッシが右、右利きのロナウジーニョが左なのは、彼らにクロスを期待しているわけではない
・縦に抜いて相手DFを動かして、サイドからボールを折り返す、これは今も昔も重要な得点ルート
バルセロナでこのプレーをするのはむしろSBである

では、バルセロナのWGがどういうプレーをするのかというと、戦術的に決まりはない
・基本的に自由だが、選手によって得意なプレーはおよそ決まっている
・メッシが常に狙っているのは、中へドリブルでカットインしてからワンツーを使ってペナルティーエリア内へ 侵入してフィニッシュするプレーだ
  →このメッシの一連のプレーは、わかっていても止められないスピードがある
・左のロナウジーニョも似たような切り込みをみせる
  →だが、メッシのようにペナルティーエリアに突っ込んでいくよりも、もう一度足下で受けてラストパスを   狙う事が多い
・もちろんふたりとも、さまざまなプレーのバリエーションがあって型にはまっている訳ではない
  →だが、ゴールに直結するような流れの起点になるプレーを持っている
・縦へ進んでクロスなら、右利きが右サイドのほうが良い
  →だが、彼らのように中へ視野を持っていろいろな仕掛けをするなら、サイドと利き足は反対の方がプレー   しやすい

前を向いたら何でもできる選手、何かを持っている選手、一番クリエイティブなアタッカーをサイドに置く
・そこからの個人能力、個人技をチームプレーに結びつける
  →それがバルセロナの戦術の芯になっている部分だと思う

◇ビルドアップの上手さ
もうひとつ、バルセロナならではの特徴がパス回しの上手さである
・トライアングルを作り、そこでの素早いパス
そして、トライアングルから別のトライアングルへ移行する長いパス
→整然かつ洗練されたビルドアップは、このチームの伝統になっている

ショートパスをつないでボールを運んでいくバルセロナのビルドアップで、選手たちのボールコントロールの上手さや体のアングルの作り方の巧みさ、動き出しのタイミングなど、目に見える部分での上手さもあるのだが、・それ以上に特筆すべきはビジョンの良さだと思う
・パス回しの中で、ボールを止めてからパスコースを考える選手はいない
  →ボールが来る前には状況を把握している
バルセロナの選手が優れてるのは、ボールをコントロールしながらパスコースを探せるところにある
 「探す」といっても顔を上げて探すのではなく、ボールをコントロールしながら、ボールを見ながら探す
→要は、目で探すのではなく、イメージで探すのだ
・パスを出す時には、イメージを確認するだけ
→これができるから、厳しいプレッシャーを受けながらでも、平然とパスを回し続けられる

バルセロナに比べて技術レベルの低いチームだと、イメージでパスコースを探すことが出来ないので、予定通りに事が運ばないと、どうしてもプレーが遅くなってしまう
・最初のイメージに合わせてコントロールするのはいいが、予定のコースが塞がれた時に、
 [最初のコントロール]→[目で改善のコースを探す]→[ボ−ルを置き直す]という手順ではワンテンポ遅くなる
→蹴った時には、自分か受け手が相手に厳しくよせられてしまいかねない
バルセロナの場合は、最初のコントロールの時点でボールの置き所を変更してしまう
・右足の前にコントロールして右前に蹴るつもりだったが、そのコースがダメになった
・すると、右足の前ではなく左足の前にボールの置き所を変更する
  →この時、すでに改善のコースをイメージしている
・顔を上げて目で確認した時には、ほとんどキックの動作に入っている
  →つまり、見なくても誰がどこにいるかわかっている

ひとつのコースを遮断されたということは、別のコースが空く可能性が高い
・どのコースが空くのか、それをイメージする能力をほぼ全員が持っている
  →バルセロナというチームの強み
・厳しく追い込まれた時でも、巧みに相手のプレッシングをかいくぐり、あれよという間にボールを逆サイドへ 逃がす潮目に乗せてしまう
  →そういうプレーに対して、カンプノウのファンはすかさず拍手を送る
   ボールタッチの方向、置き方ひとつでも、盛大な拍手が沸き起こる

バルセロナ流戦術の本家であるオランダは、よく手段と目的を混同する
・戦術とは勝つための手段に過ぎない
・自分たちの人的資源、環境、伝統を生かし、最も勝ちやすいと考えられる、勝つために合理的な方法は何か?
  →それが戦術であるはずなのだが、代表選手などは、試合に負けると「ボールも支配してチャンスも作った   のに、負けたのは納得いかない」という顔をしているし、実際にそういうことを口にする選手もいる
・いうまでもなく手段が目的化してしまっている
→手段は手段に過ぎず、それが上手くいったからといって必ずしも目的が達せられるわけではない

バルセロナは結果にも厳しい
・R.マドリードへの対抗意識が強く、ここに後れをとるのは耐えられない
バルセロナから追われるように出て行った選手、自ら逃げ出したスターは数多く、ここで選手生活を全うした スターなどいないといっていい
→クライフ、マラドーナリバウドロマーリオ、そしてロナウジーニョも例外ではなかった
・彼らが勝利をもたらす時は神のように崇め奉るが、ピークを過ぎてチームも勝てなくなると容赦はない
→その時は、次の神様候補が入団しているという寸法だ
バルセロナは、世界中で最もスターを消費し尽くしてきたクラブだろう
 美しくプレーするのは当たり前、その上で勝たなければならない
→ある意味、世界で最もハードルの高いクラブである