CHAPTER3|LIGA ESPANOLA ビジャレアル

 

(4−2−3−1)

○11

○8    ○9    ○10

○6  ○7

○2   ○3  ○4   ○5

○1

メンバー表(05-06)

番号 選手名
1 ヴィエラ
2 アルアバレス
3 G.ロドリゲス
4 キケ・アルバレス
5 ハビ・ベンタ
6 マルコス・セナ
7 ホシッコ
8 ホセ・マリ
9 リケルメ
10 S.カソルラ
11 フォルラン
監督 ペジュグリーニ

リケルメ:その使用上の注意
チリ人のベジュグリーニ監督を迎えて、ビジャレアルは強豪の仲間入りを果たした
・CLに参戦したのは05-06シーズン、ベスト4まで勝ち上がった
  →しかし、ビジャレアルが見事だったのは、その後の没落を食い止めたことだ

スペインの地方都市クラブは、CLに参戦した後に急降下する傾向がある
・やはりベスト4入りしたデポルティーボがそうだった
  →セルタ・ヴィーゴ、レアル・ソシエダも2部落ちの悲哀を味わっている
・財政規模の小さいこれらのクラブは、ビッグクラブのような補強が出来ないし、選手層も厚くない
  →国内リーグとCL、二足のわらじを履くには基礎体力が十分ではないのだ

ピークを迎えた時に、CLという大きな負荷がかかってくる、無理をする、負傷者が出る
・あるいは中心選手を引き抜かれる
・チームワークと精密なコンビネーションで勝ってきたチームだから、軸になる選手を欠くと機能しなくなる
  →ひとりやふたりを補強できても、他の選手と合わなければ万事休すだ
・新しく軸に合う選手を選び抜いて揃えるほどの余裕はない
  →ウリだったチームプレーが崩れ始めると、あとは転落の一途である

ペジュグリーニ監督はリケルメを軸にチームを作った
・古典的なナンバー10、リケルメを使うのは簡単で難しい
・簡単なのは、全部任せてしまえばいいからだ
ボールを足下に集め、リケルメの代わりに守備をやってくれる選手を配置し、リケルメのパスに反応して点を 取ってくれるストライカーがいればいい
・難しいのは、リケルメを抑えられたらチームの機能は停止してしまうことだ
  →リケルメという心臓が止まったら、もうチームに血液は流れない



リケルメは彼のスタイルでしかプレーしない
・無類のボールアーティストではあるが、案外に不器用な選手である
あるいは不器用というよりは職人肌で、プレーの手順がきれいに決まっているマエストロだ
・右足でボールに触り、左半身を相手に預けた時は、まずボールをとられない
 右足のキックは硬軟自在、しかしスイングよりも左方向へボールが飛んでいく独特の軌道を持つ
・ユース時代はボランチだったそうで、プレーの選択は意外と手堅い
  →自分の出来ることだけを淡々とやるタイプ
・銀行預金みたいな選手で、ボールを預けさえすれば利子は付けてくれる
  →ただ、預けなければ何も起こらない
・スペースがなかろうが、マークされていようが、彼が要求するならボールは無条件に預けなければならない
  →つまり、リケルメを持ったチームは大して考える必要はなく、ひたすら自分たちの頭脳を守り、盛り立て   ていくだけだ
  
戦術はリケルメである
リケルメを理解すること、やりやすいように配慮すること、徹底的にサポートすること
  →それがビジャレアルの戦術とほぼイコールだった
・近年、ここまでチームの色を決めてしまう選手はジダンリケルメしかいない
  →何かをやりたい監督にとってはジレンマだろう

ペジュグリーニ監督は賢明だった
・彼はリケルメにすべてを託す
 やれ走れない、守備をしない、ボールを持ち過ぎる、、、、そうした文句は一切言わなかった
  →リケルメの使い方を心得ていたのだ
・彼が賢明だったのは、リケルメをばっさり切り捨てた態度にも表れている
 06年ドイツW杯が終わった後、新シーズンを迎えたリケルメはフィットしていなかった
  →故郷のボカ・ジュニアーズに貸し出され、そこでリベルタドーレス杯を制する原動力となると、すっかり   里心がついてしまう
・その点、リケルメはプロフェッショナルではない
 義務感や金や名誉では動かず、愛になびく
・ボカの街とチームメイトは、無償の愛を注いでくれる
 彼は愛情に飢え、愛のない場所では生きていけない
  →ビジャレアルに戻っても、心はブエノスアイレスへ置いたままだった

ペジュグリーニはプロフェッショナルだ
・使わないと決めたら、一切リケルメを使わないし、ベンチにも置かない
  →中途半端な使い方をしても、意味がないことを知っていた
リケルメ時代に築き上げた守備力を土台に、頭脳だけをすげ替えた
  →リケルメほど癖のないロベール・ピレスを新しい軸にして、脱リケルメに成功している